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第四巻 アキレスの死

ファンドーリンが「白い目の殺し屋」と対決する、いわゆる「対決もの」(そんなジャンルあんのか?)。

4年間の外交官としての日本赴任を終えて、モスクワに帰ってきたファンドーリン。日本人の従僕マサも連れています。この巻から、二人のペアができたわけですね。

今回の敵は、第一巻でもちょっと出てきた、凄腕の殺し屋アキマス。この作品は、前半がファンドーリン、後半がアキマスの視点で描かれ、最後に両者が合体する、という構成になっています。一連の事件を、異なった二つの視点で見ることができるわけです。

この作品は珍しく邦訳がありますので、そちらをどうぞ。(『アキレス将軍暗殺事件』沼野恭子・毛利公美訳 岩波書店 2007

ちなみに後半のアキマスの章は、ギリシャ神話をもとにしたストーリーになっています。アキマスは、ずばりアキレスですね。で、日本語版では

「登場人物の名前を翻訳する際にアクーニンの原文通りにカタカナに直すのではなく、ギリシャ神話により近いひびきに変えている」

ということなのですが、うーんそれってどうですかねー。

登場人物

ファンドーリンとマサ以外の登場人物たち。

ファンドーリンの章

ミハイル・ソボレフ将軍露土戦争の英雄。白い軍服がトレードマークの「白の将軍」。第二巻では、熱血の指揮ぶりで活躍。この巻では…実はいきなりお亡くなりになっています。なお、実在の将軍スコーベレフをモデルにしているそうな。
ワンダドイツ人の歌姫かつ高級コールガール。
ヘル・クナーベ表向きはドイツの実業家。実はドイツのスパイ。
ドルゴルーコイ公爵モスクワ総督。もうろくした老人と見せかけて、実はくせものらしい。日本語版の解説によれば、当時のモスクワ総督ドルゴルーコフがモデルだが、現代のモスクワ市長ルシコフもイメージさせる人物像だそうな。
フロールドルゴルーコイ公爵の従僕。
カラチェンツェフモスクワ警察長官。
フルティンスキー総督官房の秘密部局長。カタカナにすると日本語的にビミョーな名前です。
グクマソフソボレフの副官。頭の中まで筋肉なコサック騎兵。第二巻にもちらっと出てきました。
グルーシン警部第一巻にも出てきた、ファンドーリンの元上司。いまは定年して退屈しきっている。
エカテリーナ・ゴロヴィナソボレフの愛人。
ミーシャ・マーリンキイモスクワの犯罪街ヒトロフカに巣食う、犯罪者の親玉。

アキマスの章

アキマス「白い目」の殺し屋。ファンドーリンの敵役。「白い目」というのは、北欧人のような色の薄い目と言うことです。
ハサンアキマスの叔父。日本語版では「ケイロン」になっている。ほとんど盗賊・山賊のようなおやじ。
エフゲニヤアキマスの初恋(?)の相手。日本語版では「イヴゲネイア」になっている。
メドベージェフエフゲニヤの夫で金持ち。
リコリ弁護士弁護士になりたての青年。日本語版では「リュカロン」になっている。
キリル大公皇帝アレクサンドル三世の弟。かなりの権力者。架空の人物です。

ストーリー

日本語版があるので、まあそちらを読んでください。

英雄「白の将軍」が謎の死。

4年ぶりにロシア・モスクワに帰ってきたファンドーリン。泊まったホテルに、偶然ソボレフ将軍も宿泊していることを知る。喜ぶファンドーリンだが、どうも様子がおかしい。

赴任の挨拶のため、モスクワ総督ドルゴルーコイ総督を訪問したファンドーリン。そこに急使がやって来て、ソボレフ将軍の死を伝える。不審に思ったファンドーリンは、さっそく捜査を始め、やがて巨大な陰謀に立ち向かうことになる…。

挿絵集

アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。

あっけなくお亡くなりのソボレフ将軍。
ドルゴルーコイ公爵。暑苦しい顔と服装ですね。書いてある名前が、間違って「ドルゴルーコフ公爵」になってますよ。
アキマス。北欧・バルト系の感じがよく出てますね。
ソボレフの副官グクマソフ大尉。第二巻でも出てきました。
ワンダ。「г-жа」というのは「ガスパジャー(英語のMiss.)」ですね。あんまり美女ちゃうな。

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