原題は「ファンタースチカ」。辞書的には「幻想物語」とか「ファンタジー」という意味のようですが、内容はファンタジーとは違いますね。「ナウーチナヤ(科学の)・ファンタースチカ」と言うとSFの意味なので、そっちに近いのではないかと思われ。
バス事故で生き残った結果、超能力を獲得した、二人の若者の話です。
なんでしょうか、スティーブン・キングみたいな作品をねらったんでしょうか。最終的には、異星人の侵略が背景にあったりします。
主人公はダルノフスキーとドローノフという二人の若者で、さらに、重要キャラの美少女ドリーナというのも出てきます。この3人の名前は、アクーニン作品でおなじみの、ファンドーリン(フォン・ドールン)一族との血縁を示唆しておりますな。
ラストの方は、1991年8月に起きた、ソ連のクーデター騒ぎが時代背景になっています。改革を進めるゴルバチョフ書記長に、副首相らが反乱を起こしたが、けっきょくへたれて、かえってソ連崩壊のきっかけになりました。
作品では、この事件の裏にも、異星人の侵略がからんでいた、ということで。
最後はトントン拍子に話が進みますが、途中まではストーリーが見えず、退屈ですなー。
しかし、この表紙はすごいデザインだな。
ロブ(ロベルト・ダルノフスキー) | 優等生。謎のバス事故に巻き込まれ、セールイと二人だけが生き残る。その結果、他人の心を読む不思議な能力をゲット。 |
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セールイ(セルゲイ・ドローノフ) | 不良グループのメンバー。アル中の義父に虐待されていた。ロブと同じく、バス事故に巻き込まれて生き残る。その結果、超スピードで動けるようになる。 |
インナ | ロブの妻。美女。 |
フセヴォロド・イグナチエヴィチ | インナの父。政府の大物。 |
イワン・パンテレーヴィチ | スポーツ協会「レーニンの鷹」の理事長。セールイをスカウトして、トップアスリートにする。 |
ミュラー | セールイの所属する不良グループのリーダー。本名メリニコフ。 |
マリアンナ・ドリーナ | 謎の美少女。 |
ヴァシリエフ大佐 | KGB特殊部隊の指揮官。 |
ネタバレにならない程度に解説。
モスクワ郊外で、バスが謎の事故で大破。生存者は、学生二人のみ。
事故の後、生き残ったロブは、他人の心を読めるようになる。もう一人生き残ったセールイは、興奮すると、通常の4倍のスピードで動けるようになる。
ロブは、心を読む能力を活かし、外交官を目指す。専門の大学に入り、結婚もする。
セールイは、不良グループの格闘王として、リーダーのミュラーの右腕になる。その後、大物イワン・パンテレーヴィチにスカウトされ、世界的なアスリートとしてリッチになる。
それぞれ超能力で出世した、ロブとセールイ。ソ連はゴルバチョフ改革で大混乱になるが、二人はリッチな生活を送る。
そんな中、二人は謎の美少女マリアンナに出会う。マリアンナは口がきけないが、ロブのように心を読む超能力がある。
最初はセールイがマリアンナと暮らすが、ロブがかっさらう。セールイはそれを見つけ出して襲撃。ここで初めて、ロブとセールイは、お互いがバス事故の生き残りだと知る。
という時に、なぜか官憲の特殊部隊が襲撃してきて、マリアンナがさらわれる。ロブとセールイは、二人で彼女を探す。
ロブとセールイは、ついに、マリアンナが囚われている研究所を見つける。突入するが、そこで、自分たちの超能力や、マリアンナの秘密を知る。
と思ったら、とっ捕まって眠らされる。目覚めると、特殊部隊のヴァシリエフ大佐がいた。ヴァシリエフは、全ての原因は、異星人の侵略だと言う。まあ、SFですので。
折しも、ソ連はクーデター騒ぎで大動乱。陰で操っているのも、異星人だと言う。それに対抗する秘密結社の指揮官は、意外な人物だった。
ロブとセールイは、異星人の計画を防ぐため、任務を与えられるが…。
作品の結末は、1991年8月のソ連クーデター事件にからんでいますが、その参考画像など。
クーデター一派の命令で、出動した戦車部隊。赤の広場には、戦車が良く似合う。 | |
市民に説得される、クーデター側の兵隊。 | |
クーデターの首謀者「非常事態委員会」の人たち。ヤナーエフ副首相がリーダーだそうな。 | |
クーデターに立ち向かい、株をあげたエリツィン。 | |
クーデター側はへたれて、解放されたゴルバチョフ書記長。でも完全に面目丸つぶれで、間もなく書記長を辞任。 | |
ロシアの「ホワイトハウス」前にバリケード。ここに、反クーデターの市民が連日集結したようです。 |